タイムトラベルもの禁止

2010年だけでなく、21世紀最初の10年を代表する顔、マーク・ザッカーバーグ. facebook創始者にして親友に6億ドルの訴訟を起こされた学生企業家. ハーバード大学に在籍する天才プログラマーにしてマトモな人間関係を構築できない裏切り者ハッカー. そして世界で最も若い億万長者にして世界で最も孤独な男. この映画はそんな彼の半生を見事に描いた新たなる青春映画の名作です. ノンフィクションの原作が完成する前から脚本の製作が始まっていたというこの映画ですが、まずマークの天才ぶりと孤独を恋人エリカとの会話だけで見せ切るOPが秀逸すぎます. 一般に天才と呼ばれる人たちに共通する、言葉に発する頃には頭の中で既に完結している頭の回転の速さが「話が飛んでいる」と誤解され、議題に不必要な要素を会話から取り除こうとする作業が「人の気持ちを考えない性格」と捉えられる悲しき現実. 加えて常人には理解してもらえない、いや天才から見れば常人が理解しようとしないその淋しさから逃げるように学生寮へと帰っていくマークの小さく見える背中. そう、いつの時代も「天才は孤独」なんです. そんな彼がエリカにフラれた腹いせにたった数時間で女子学生人気投票サイトを立ち上げ、2万2000アクセスも記録するというのは本当に驚き. そしてウィンクルボス兄弟のアイデアを拝借し数十日でfacebookの原型を完成させてしまうというのも本当に驚きだったのですが、それ以上に驚いたのは彼のfacebook以外のことに関しては全くと言っていいほど何も考えていない、その「人としての無能」ぶり. 特に胡散臭いショーン・パーカーの口車に乗せられすぎの挙句に、親友エドゥアルドの株を30%から0.03%にまで希薄化させる「人の気持ちを考えない性格」はもはや不必要な要素を省こうとする作業ではなく、単に「人として無能」なだけ. 訴訟の話し合いの席でも一人カジュアルスタイルでいたのもショーンの影響なのか分かりませんが、フジテレビとホリエモンのあの記者会見の時と同じように、この天才の周囲には彼に忠告してくれる人間がいないという孤独も同時に表現しているようでしたよ. ただ一般的には屈強で高学歴で紳士なウィンクルボス兄弟や思いやりがあって努力家のエドゥアルドも天才と呼ばれてもいい部類でも、マークという一点において飛び抜けた才能を持った「真の天才」から見ればやはり彼らは所詮「有能止まり」. 逆に実績のあるショーンこそが自分と同類に見えてしまうマークの気持ちもどこか理解できてしまうんですよね. でも社会に出ると自己顕示欲などから何も考えずに天才のおこぼれに群がるハイエナたちと付き合いすぎて、いつの間にか「真の天才」からランク落ちした天才もたくさんいるのも事実. そしてそれが嫌なら常に孤独でいるしかないのも事実. ラストでマークが陪審員選びを専門とする2年目の女性弁護士との会話の後にfacebookにアクセスしたのも、多分彼が初めて自分の分野以外でのエキスパート(天才)に触れたことで自分自身を見つめ直したからではないでしょうか. 深夜らじお@の映画館 も結構周囲から理解してもらえない部類の人間です. ※お知らせとお願い ■ 【元町映画館】 に行こう. 10分しか記憶が保てない前向性健忘という記憶障害に見舞われた主人公レナードが、妻を殺した犯人を探していくというありふれた物語を、時間軸をいったん解体し再構築して物語を進めるという、ミニシアターならではの異色さで描いたこの映画. 小品ながらアカデミー編集賞などにノミネートされた快挙は今も記憶に鮮明に残っていますが、その一方でこの作品を期に一躍スター監督になったクリストファー・ノーランはこれ以降あまりいい映画を撮っていないというイメージが強くなってしまったのも事実です. ウェッジヒール 単純な物語も見せ方次第で大きく変わるとよく言われますが、オープニングでいきなりレナードに殺された男が本当にレナードの妻を殺害した犯人かを10分置きに時間を遡りながら見せていくこの手法. まるでパズルを少しずつ完成させていくかのように徐々に頭の中でストーリーが構築されていく様が何と素晴らしいことか! 映画を見て物語の先読みをすることはあっても過去を読んでいくことなんて今までになかっただけに、すごく斬新に感じましたね. しかも主人公が記憶障害のためこまめにメモを取り、絶対に忘れてはいけないことはタトゥーとして体に刻んでいく設定が映画をより面白くしていたと思います. そもそも記憶というものはその時何があって自分は何を感じたかまでが含まれているものだからこそ、その時何があったかを正確にメモできても、その時自分は何を感じたのかまでをきちんと残すことは不可能なんですよね. だって細かな感情を100%言葉にできる人なんていませんし、ましてやそれを文章として残すとなるともはや神の領域ですよ! ですからそこんとこをうまく突付いて物語の鍵にし、また主人公だけでなく観客の記憶までをも巧妙に利用したこの映画の構成力は本当に素晴らしかったと思います. また寂れた雰囲気が漂うキャストもよかったです. 特に『マトリックス』で裏切り者サイファー役でお馴染みになったジョー・パントリアーノ. いい感じの悪役さんでしたね~. 一応『バッドボーイズ』ではあの暴走警官2人の善き上司役を演じていた方なんですけど、やっぱり寂れた感じの悪役を演じさせたらこの人の右に出る者はいないですよ. あのツルピカヘッドとふにゃヒゲが本当にいいです. でも同じく『マトリックス』に出演していたキャリーアン・モスは本当に寂れていたので魅力全くなしでしたね. 寂れた感じは雰囲気だけで十分だったのに・・・. 思い起こせばこの映画を見た神戸の三宮アサヒシネマも閉館になり、この手の秀逸なミニシアター作品を堪能できる旧き善き映画館がどんどん姿を消す昨今. あの旧き善き映画館での思い出だけは決して忘れたくないですね. 深夜らじお@の映画館 は都合の悪いことはすぐに忘れます. 何かと規制の多い中国でまた新たな映画に対する規制が発表されたそうです. その内容というのが「タイムトラベルものの上映及び放送を禁止」するというもので、その理由が「タイムトラベルものは歴史を軽薄に扱っているから」だとか. タイムトラベルものといえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や 『ターミネーター』 を始め、 『言えない秘密』 『イルマーレ』 など、古今東西ジャンルを問わず様々な映画やドラマが作られてきた定番もの. それを規制してしまうというのはちょっと中国もアホになってきているなと思いますよ. まぁ多分中国政府の本音は歴史考証が必要なタイムトラベルものを規制することで自分たちに都合の悪い過去に蓋をしたいということなのでしょうが、現在中国では「宮」という現代に生きる女性が18世紀の男性たちと恋に落ちるTVドラマが流行っているそうで、このドラマも規制対象になってしまうのでしょうか. いやそれ以前にタイムトラベルものを規制するということは、日本から「JIN-仁-」などのTVドラマを輸入することもできなくなれば、今後 『ターミネーター』 シリーズの新作も上映できなくなるだけでなく、世界レベルで子供たちに人気のある「ドラえもん」もタイムトラベルものですからダメになりますよね. 中国政府関係者はそこまで考えていたのでしょうか? あまりにもアホな決定としか思えませんよ. てな訳でこんな記事を書きつつも、中国に住んでいる方の多くは映画や日本のドラマなどを全てネットで見ているらしいので、映画に関してはあまり意味を成さないとは思いますが、ただ「ドラえもん」は中国で放送していたらどうなってしまうんでしょうね? 深夜らじお@の映画館 は中国政府の考え方がよく分かりません. ※お知らせとお願い ■ 龍が如く OF THE END(オブ ジ 【元町映画館】 に行こう.